1.施設の目的をはっきりさせる

ごきげんよう♡

2015年08月05日 14:27

「どうして事業所内保育施設を作りたいのですか?」という私の問いに、今までに一番多かったのは「ちょうどスペースが余っているから託児所でも・・と思って。」という担当者のお答え。
もしくは「土地が余っているので、社長に企業内託児所でも作ったらどうか?と言われて・・。
当社は女子社員も多いし、この辺は待機児童も多いので、保育園に入れない子もいるみたいで。という感じでしょうか。

しかし、これってどうでしょう?
空間や空き室があるから何となく・・ということは、この会社は別に事業所内保育施設を必要だと感じているわけでないということですよね。
なので、そのあとの会話の流れは決まってきます。

事業所内保育施設には、開設するのにこのくらい、運営していくのにこのくらいの費用がかかりますよという話になった途端、担当者の顔が曇ります。
「リーマンショックから立ち直ったとはいえ、ウチもまだそんなに潤沢ではないので・・。」
「う~ん。それは無理だなぁ。」
お解りの様に、そのあとそのお客さまから再びお声がかかることはありません。

考えてほしいのです。
なぜ事業所内保育施設が必要なのか?
御社にとって事業所内保育施設に何を担わせるのか?
そのために、どれだけの資金と、人材と、労力を投資できるのか?


ある会社は、慢性的な人材不足が事業運営に支障をきたしていました。
膨大な採用費をかけても、結局は同じ業界の中での人材の取り合いになってしまう。
加えて、人事担当者は思っていました。
他社とのサービスの差別化を図るためには、他業種経験者から人材を採用したい。
そこで考えたのが事業所内保育施設の開設だったのです。
新事業所のオープンを控え、同時に事業所内保育施設を開園しました。
人事担当者の思惑通り異業種からの転職者が続々と応募し、新戦力として予想以上の人材を確保。今では、育休明けの従業員のお子さまの受け皿としての役割も果たしています。
この会社は、事業所内保育施設を『人材の採用戦略』のひとつとしての目的を持たせました。

一方、事業所内保育施設を『つくること自体を目的とした会社もあります。
地方の大きな個人病院がグループ会社と共同で開設した事業所内保育施設は、まさに会社のイメージアップのために作ったものでした。
グループ会社の敷地内に、ゆったりとした広さで、設備が整った専用施設を新設しました。
看護師をはじめ専門職、事務職を含め、確かに女性が多い会社ではありますが、近隣の保育園事情もよく、事業所内保育施設は一時保育程度で殆ど稼働していません。
それでも、あることが大事。僅かでも稼働していることが大事。その姿勢は一貫しています。
院長をはじめとする経営サイドは、どうやら目先の効果だけを求めているのではなさそうです。

そして、これから事業所内保育施設を検討している会社があります。
中堅規模の製造業。現場には若い女性がとても多いといいます。
製造業にとって、人が辞めるということは、同時にその人が持っていた技術もなくなるということ。せっかく育った人材の流出が続けば、会社が弱体化してしまいます。
現在、従業員の6割程度の女性比率を将来的に8割まで持っていきたい、育休でお休みしている人がいても、常に8割状態を維持するために、安定して働ける職場環境をつくらなければならない。
その会社の姿勢を従業員に示す意味で今、事業所内保育施設をつくることが必要なんです!と、社長さんは熱く語ってくれました。
この会社の開設目的は、『技術力の維持(人材の定着)』なのですね。

このように、会社によって事業所内保育施設をつくる目的は違います。
しかし、開設まで至ったどの会社にも、施設に対するゆるぎない意思を感じます。
事業所内保育施設は、開設までの過程で考えなければいけないことがたくさん出てきます。
だからこそ、最初の動機、目的の明確さが問われるもの。
そして、強い意思とその重みを持って取り組んでいただければと思っています。

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